<第一回>2008.12.24


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クリスマス・オラトリオ

Weihnachts Oratorium BWV248 J.S.バッハ)

 わが国でも近頃は、12月になるとクリスマスの飾りやイルミネーション、また多彩なイヴェントが至る所で目に付くようになる。クリスマスのキリスト教本来の意味と関係なく行われている。しかし、キリスト教国では、その様子は国によって少しずつ異なるが、復活祭とともに降誕祭(クリスマス)は、重要な行事である。

 今回は、J.S.バッハのクリスマス・オラトリオBWV248を紹介し、ドイツにおけるクリスマスの雰囲気を味わ得たらと思います。

 オラトリオについての詳しい説明は、省かせてもらいます。簡潔に言うと「宗教的音楽劇」。独唱・重唱・合唱・オーケストラ等で演奏会形式で上演される。ラテン語のオラツィオ(Oratio)の「祈り」が語源とされる

 J.S.バッハの「クリスマス・オラトリオ」は、通常の「宗教的音楽劇」とは異なり、実際は6曲の「教会カンタータ」から成っている。「教会カンタータ」は、プロテスタント教会の礼拝で演奏される楽曲のことです。ご存じのようにバッハは、ルター派のプロテスタントの信者で、1723年から死の年の1750年まで仕えたライプツィヒの聖トマス教会の日曜ごとの礼拝でのカンタータを演奏することが大事な務めの一つでした。以前のヴァイマール時代他を含めて200曲に及ぶ「教会カンタータ」が現在残されている。これは、バッハの宝石箱のような珠玉の200曲と言える。是非時間をかけて聴いてみてください。

 さて、「クリスマス・オラトリオ」は、前述のように6曲の教会カンタータで成っています。バッハがライプツィヒ12年目の17341225日から173516日の間、聖トマス教会と聖ニコライ教会の礼拝で1曲ずつ6日間で初演された。

 第1部が1225日(降誕節第1日)、以下第21226日(降誕節第2日)、第3

1227日(降誕節第3日)、第411日(御子の割礼と命名の祝日)、第512日から5日の日曜礼拝(1735年は2日だった)、第616日(顕現節)のように演奏された。このように6曲が6日間に分けて礼拝で演奏されるが、イエス降誕の物語をルカ福音書およびマタイ福音書をテキストとして進行している。また、ニ長調を主調として歌曲の調性がくまれていることなどから、全体の統一が図られていてまとまった「クリスマス・オラトリオ」と呼ぶことができる。次に印象深い部分をかい摘んで説明します。

 1部クリスマス第1日「歓呼せよ、この良き日を」(Jauchzet, frohlocket, auf preiset die Tage) 開始の合唱は、ティンパニーと3本のトランペットを伴って華やかに始まる。

これは、十字架による勝利の王が私たちに約束される喜びの音楽である。華やかな中に、厳かで敬虔なクリスマスの雰囲気を与える。第4曲オーボエ・ダモーレを伴うアルトのアリアは、救い主を迎え入れる準備を促す魅力的です。また第8曲バスのアリアは、トランペットを伴い力強く華やかに、偉大なる王・強き王を歌う。2部クリスマス第2日「その地で羊飼い達が」(Und es waren Hirten derselben Gegend)開始の音楽は、天使が野宿する羊飼い達に御子の誕生を知らせるパストラル・シンフォニー。6曲中第2部のみ合唱でなく、オーケストラのみの音楽で開始される。第6曲テノールのアリアは、羊飼い達にイエスのもとへ急ぐことを促す。羊飼い達を見守る天使をあらわすフルートが印象的である。また、10曲目のアルトのアリア「眠れ、愛しの御子よ」(Schlafe, mein Liebster)は、飼い葉桶に眠るイエスへのマリアの子守歌である。3部クリスマス第3日「天の支配者よ、この片言の祈りを聞き入れください」(Herrscher des Himmels, erhore das Lallen

クリスマスの最後飾るに相応しく第1部同様3本のトランペットを伴った華やかな賛美の合唱で開始される。そしてここでも第8曲のあるとのアリアが印象的である。御子誕生の奇跡対するマリアの内省的なアリア。4部命名の祝日「感謝し、賛美をもてひざまかん」(Fallt mit Danken, fallt mit Loben)開始の合唱は、2本のホルンが加わりヘ長調で前半の3曲と変わった、新鮮な雰囲気を与えている。第4曲主に呼びかけるオーボエを伴ったソプラノのエコーアリアが何と言っても印象的。そして第6曲ヴァイオリンとの掛け合いの見事なテノールのアリアが続く。技巧的な力強い信仰を歌ったアリアである。第5部新年第1日曜日「神に栄光あれと歌わん」(Ehre sei dir, Gott, gesungen)第5曲バスのアリア「照らし給え、わが暗き心を」は、オーボエ・ダモーレのオブリガートを伴って印象的である。また、第9曲ソプラノ、アルト、テノールの三重唱は、ソプラノとテノールの問いかけにアルトが答えるといった形をとった特徴ある曲である。第6部顕現節「主よ、高慢な敵が息巻く時」(Herr, wenn die stolzen Feinde schnaube) 最後の曲は、東邦の博士達の礼拝を扱っている。確信を持って敵に立ち向かう姿をテノールが力強く歌う第9曲。それに続く4声のレチタティーヴォに導かれ終曲の合唱が歌われる。3本のトランペットを伴った勝利宣言の華やかな曲だが、このコラールは受難コラールで有名な旋律である。これは、降誕の意義が後の受難と復活にあること示唆したことにひかならない。

 以上が簡単なJ.S.バッハ「クリスマス・オラトリオ」の紹介です。是非お楽しみください。最後にもう1曲クリスマスの雰囲気のある曲を紹介しておきたいと思います。それは

ベルサイユ宮を中心に活躍したM.A.シャルパンティエ(Marc-Antoine Charpentier)の作曲した「真夜中のミサ曲」(Messe de minuit)です。J.S.バッハより半世紀ほど前に活躍した人で、このミサ曲はフランスのノエルを主題に用いた素朴なクリスマスの音楽を感じさせる曲です。これも是非お聴きください。

ンケン 音楽顧問
伊賀美 哲[いがみ さとる]
 
国立音楽大学声楽科卒業。波多野靖祐、飯山恵己子諸氏に師事。現在、田口宗明氏に師事。指揮法を故櫻井将喜氏に師事。1982年、第7回ウイーン国際夏季音楽ゼミナールでE.ヴェルバ、H.ツァデック両 教授の指導を受ける。1985年フィンランドのルオコラーティ夏季リート講座で、W.モーア、C.カーリー両教授の指導を受け、その後W・モーア教授にウ イーン、東京で指導を受ける。1986年から毎年、リートリサイタルを開催、シューベルトの歌曲集「冬の旅」、「美しい水車小屋の娘」、「白鳥の歌」、 シューマンの歌曲集「詩人の恋」等を歌う。千葉混声合唱団では、ヘンデル「メサイア」、モーツアルト「レクイエム」、J.S.バッハ「ミサ曲ロ短調」「マタイ受難曲」などを指揮する。現在、千葉混声合唱団、かつらぎフィルハーモニー指揮者。